韓国で驚いたこと、と訊かれて。
韓国では主に講師として韓国の学生や生徒と接していたため、「日本人として韓国で感じること」についてよく訊かれた。特に私が韓国に渡った90年代後半は、まだまだ世界における韓国の存在感は小さく、「なぜ日本人がわざわざ韓国に来るのか」という感覚が強かったようだ。
日本は目標ではなく、ライバルという考えは昔からあったが、実際にサムスンなどの躍進によって一部では日本を凌駕すると「なぜ韓国に」というような考え方はだんだん減ってきたのだが、それでもまあ、今でもある程度教育を受けた人は、日本を必要以上に見くびったりはしない。
韓国での生活が日常となり、韓国生活に慣れきっていたのか、あるとき、新しい学生たちを前にして、「韓国に来て一番驚いたことは何ですか?」と訊かれ、すぐに思いつかず、なんの考えもなく思いついたことを言ってしまったことがある。
「道端にあるゲロが赤くて驚いた」
すると教室にいた学生たちはどっと笑い、「先生何言ってるの」とか「うける」とかそういう声が飛んできて、思いがけずうけてしまい私も照れ笑いなどをしていたのだが、静かになった頃合いを見計らって、前の席に座っていた真面目そうな学生が
「先生、日本のゲロは何色ですか?」と質問した。
「韓国みたいにあちこちにゲロがあるってわけじゃないけど、黄色っぽい白かなあ」と答えるとまた学生たちはどっと笑った。良い思い出だ。